二次電池Ⅳ(国際特許(PCT)出願) ~ポストLiイオンを探る~

二次電池Ⅰ(概観)では国際特許分類IPCをH01M 10/00の二次電池に絞って国際特許出願について概観し、Ⅲ(日本特許)では1階層上のIPC H01M(電池)に探索範囲を拡大した上でキーワードで種々の電池に関する出願傾向を探った。今回は、同じ手法で国際特許出願の詳細を探ってみる。

注:手がかりを探る程度の検索であり、精査した結果は期待でない。精度を高めるには、検索式の調整や論文など他の情報源による検証が必要。

まとめ

ポストLi+電池を探る目的で、探索範囲をIPCで「二次電池」から「燃料電池」や「混成電池」含む「電池」に拡大
(国際特許分類(IPC) H01M 10/00→H01M )*キーワードで検索
日本出願を調査した。

注:手がかりを探る程度の検索であり、精査した結果は期待でない。精度を高めるには、検索式の調整や論文など他の情報源による検証が必要。

  • 全体として、2010年頃から出願件数は増加傾向(JPと同様)
  • 潮流を作りそうな電池はLi硫黄、Li空気電池

  • LG化学(KR)が、Li硫黄, Li空気電池の両方に注力

  • Li硫黄電池に関する出願では、グラフェン電極をコア技術にするNanotek Instruments (US)が存在感を高めている

二次電池Ⅲ(日本特許) ~ポストLiイオンを探る~

二次電池Ⅰ(概観)では、国際特許(PCT)出願に着目したが、今回は日本特許出願を詳細に分析してみる。

探索範囲を、[ IPC=H01M 10/00 二次電池とその製造方法 ] から、
1階層上の [ IPC=H01M ] に拡大。
[ IPC=H01M ] は、「化学的エネルギーを電気的エネルギーに直接変換するための方法または手段,例.電池」と定義されており、
  10/00:二次電池とその製造  以外に、
  6/00:一次電池とその製造
  8/00:燃料電池とその製造
  12/00:混成電池とその製造
を含む。

IPCの探索範囲を拡大した一方で、キーワードをANDして絞り込む。

注:多くのノイズを含むこととなるため、本来なら目視によるスクリーニング(ノイズ除去)を行うべきである。しかし、大まかな傾向を探るだけであれば何とかなるかもしれない。

まとめ

ポストLi+電池を探る目的で、探索範囲をIPCで「二次電池」から「燃料電池」や「混成電池」含む「電池」に拡大
(国際特許分類(IPC) H01M 10/00→H01M )*キーワードで検索
日本出願を調査した。

注:手がかりを探る程度の検索であり、精査した結果は期待でない。精度を高めるには、検索式の調整や論文など他の情報源による検証が必要。

  • 全体として、2010年頃から出願件数は増加傾向
  • 水素/空気電池は、燃料電池の一方式として自動車メーカーを中心に開発中か(?)
  • 潮流を作りそうな電池はLi硫黄電池。出願の中心はLG化学(KR)
  • 別の潮流はLi空気電池。NTTが注力(?)、パナソニックが参入(?)
  • Liの代替金属イオンを探る基礎研究は地道に継続中(?)

二次電池Ⅱ(テスラ) ~ポストLiイオンを探る~

電気自動車に注力するテスラ(TESLA)にとって電池はキーデバイスのはず。にもかかわらず、特許出願件数では存在感が見えてこない。テスラの特許出願戦略を探ってみた。

二次電池(H01M 10/00)の国際特許(PCT)出願 33,099件中、US出願人は 5,735件 (前回報告)
この中で、テスラ(Tesla Inc., Tesla Motors Inc., Tesla Motors Canada)の出願は、30件。

TESLAの出願国別出願戦略

まとめ

「二次電池」(国際特許分類(IPC) H01M 10/00)について調査した
国別・出願人別の国際出願動向では、TESLAの存在感は薄かった。
しかし、出願件数の絶対値が低いだけで、堅実な特許戦略

  • JP, DEなど、主要自動車メーカーのある国に出願
  • 車両、電池、周辺回路などへ、バランスよく出願
  • 興味のある新規分野は、宇宙開発よりも太陽電池か?

二次電池Ⅰ(概観) ~ポストLiイオンを探る~

Li-S電池をはじめとして、Li空気電池、K+電池、水素/空気電池、など、種々の二次電池が研究開発されている。

参考:「現行Liイオン2次電池超えの電池が台頭、2020年にLi-S系が実用化へ」(日経XTECH, 2020.1.17)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01140/00009/

特許分析からは、どんな景色が見えるのか?』探ってみた。

国際特許分類(IPC)で「二次電池」に分類される特許を分析

予想通り、中国特許の出願件数が多い。US, KR, EPよりも、日本出願が多い。

国際特許(PCT)出願に着目

重要な特許に絞る一つの簡便なやり方として、国際特許(PCT)出願に着目してみた。

出願人の国籍としては、JPが圧倒的に多い。

年次推移をみてみると、日本企業の国際特許出願件数は、2011年後失速している(震災のダメージはともかく、ダメージからの回復が見られない)。一方、2014年頃から韓国と中国からの出願が急伸している。

出願人国籍別アクティブプレイヤー

出願人の国籍別に、出願件数の多い出願人の顔ぶれを見てみる。

まとめ

  • ポストLi+電池を探る目的で、まず現状を概観「二次電池」(国際特許分類(IPC) H01M 10/00)について国別・出願人別の国際出願動向を調査
  • ここ20年の出願件数の合計は、日本がトップだが、2011年以降急減中。一方、急伸しているのは、韓国と中国
  • 韓国は、LGに集中(61%)
  • 中国は、BYDがトップ(12%)ながら分散している

ゲノム編集特許に知財高裁の判断 ~CRISPR-Cas9~

日経電子版で「ゲノム編集技術、米研究所の特許認める 知財高裁判決」(2020/2/25付け)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56015410V20C20A2MM8000/
を見つけました。記事によると「今回の訴訟で問題になったのは、遺伝子を簡便に切り貼りできる画期的手法とされる『クリスパー・キャス9』という技術。」とのことです。

新型コロナウィルス(COVID-19)のワクチンは、mRNA(メッセンジャーRNA)を利用する方式が、主流で検討されているようにも報道されており、CRISPR-Cas9のようなゲノム編集技術が使われるのかなと思って、注目してみました。

門外漢なので、まずは「『クリスパー・キャス9』って何?」というところから。インターネットで調べてみると、目的の配列を正確に切り取って貼り付けることができる、ゲノム編集にとって画期的な技術のようです。

では、そのような重要な技術の特許を米国の研究所に抑えられたら、日本のゲノム編集事業にはダメージなのでしょうか?そのあたりも、日経電子版では取材されています。

「米企業のゲノム編集技術認める判決 専門家の見方」(日経電子版, 2020/2/25)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56036210V20C20A2000000/?n_cid=DSREA001

技術的、商業的な影響については、専門家にお任せするとして、私としてはどんな特許が争われたのかを調べてみました。訴訟の対象となった特許は以下の2件でした。

一方(特願2016-117740)は特許性を否定され、他方(特願2016-128599)は特許性が認められました。(記事では判決文の探し方、入手の仕方も紹介しています。)

さらに、2つの特許出願に、どのような関連特許(特許ファミリー)があるのかを調べてみました。

その結果、上のように既に登録されている特許4件、審査中と思われるもの2件があることがわかりました。

事業への影響を評価される方は、今回の裁判で特許性が争われた2件以外にも、それらの特許ファミリー全体で、検討されますようお勧めいたします。

詳しくは、pdf版(1.4MB)をダウンロードしてお読みください。