二次電池Ⅴ(続報) ~ポストLiイオンを探る~

日経電子版に同趣旨の記事が出ましたので、ご紹介します。合わせて、紹介されたスタートアップ企業4社の特許出願状況を調べてみました。

2020/7/28付け日経電子版の記事:「リチウムイオン電池の次、新興勢が開発に名乗り」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61873050S0A720C2X11000/?n_cid=kobetsu

「CATL(CN)、パナソニック(JP)、LG化学(KR)が先行し、スタートアップ4社が追う。スタートアップ4社は、スリーダム、アジュールエナジー、コネックスシステムズ、AC Biode」

スリーダム

東京都立大学 金村聖志教授からのスタートアップ
2014年創業 神奈川県横浜市 https://www.3dom.co.jp/about/

製品発表
2020.7.27 400Wh/kg級リチウム金属二次電池 サンプル
2020.7.27 30Ah級リチウム金属二次電池 量産へ
など

スリーダムの特許

アジュールエナジー

富士フイルムの研究者 伊藤 晃寿氏のスタートアップ
2019年創業 宮城県仙台市 https://www.azul-energy.co.jp/

特徴
燃料電池用の触媒として使用される、白金炭素触媒の代替として、レアメタルを使わない金属錯体青色顔料と炭素を原料とした新素材「AZUL」を開発

自社特許は未だ確認できず。(2019年創業のためか)

コネックスシステムズ (CONNEXX SYSTEMS)

2011年創業 京都府相楽郡精華町 https://www.connexxsys.com/

製品発表
『これまでにない急速充放電を可能とするリチウムイオン電池「HYPER Battery™」を実用化』 3,500W/kg ( https://www.connexxsys.com/notice/post-2597 )(2020.2.26)
『BIND Battery®搭載の100kWh級蓄電システムをBCP用途に今夏より展開』(2020.2.26)
など

AC Biode

久保忠嗣氏創業のスタートアップ
2014年創業 京都府京都市 https://www.acbiode.com/

特徴: 正極(anode)負極(Cathode)と Biodeを備え、直流(DC)に代えて交流(AC)の充電を可能とした

まとめ

「ポストLi+電池を探る」という同じ狙いで、日本経済新聞から報道された(2020/7/28)ので、記事で紹介されたスタートアップ企業  4社について、特許出願状況調査

  • スリーダム:金村聖志首都大学東京教授による発明を中心に、外国出願にも積極的
  • アジュールエナジー: 2019年創業のため、特許出願は確認できず
  • CONNEXX SYSTEMS: 複合電池システムを中心に、外国出願も含めて、多数の特許出願がある
  • AC Biode:出願時は水と油の研究、現AC Biode CTOの水沢厚志氏の日本特許2件がコア技術。外国出願等は未だ確認できず

二次電池Ⅳ(国際特許(PCT)出願) ~ポストLiイオンを探る~

二次電池Ⅰ(概観)では国際特許分類IPCをH01M 10/00の二次電池に絞って国際特許出願について概観し、Ⅲ(日本特許)では1階層上のIPC H01M(電池)に探索範囲を拡大した上でキーワードで種々の電池に関する出願傾向を探った。今回は、同じ手法で国際特許出願の詳細を探ってみる。

注:手がかりを探る程度の検索であり、精査した結果は期待でない。精度を高めるには、検索式の調整や論文など他の情報源による検証が必要。

まとめ

ポストLi+電池を探る目的で、探索範囲をIPCで「二次電池」から「燃料電池」や「混成電池」含む「電池」に拡大
(国際特許分類(IPC) H01M 10/00→H01M )*キーワードで検索
日本出願を調査した。

注:手がかりを探る程度の検索であり、精査した結果は期待でない。精度を高めるには、検索式の調整や論文など他の情報源による検証が必要。

  • 全体として、2010年頃から出願件数は増加傾向(JPと同様)
  • 潮流を作りそうな電池はLi硫黄、Li空気電池

  • LG化学(KR)が、Li硫黄, Li空気電池の両方に注力

  • Li硫黄電池に関する出願では、グラフェン電極をコア技術にするNanotek Instruments (US)が存在感を高めている

二次電池Ⅲ(日本特許) ~ポストLiイオンを探る~

二次電池Ⅰ(概観)では、国際特許(PCT)出願に着目したが、今回は日本特許出願を詳細に分析してみる。

探索範囲を、[ IPC=H01M 10/00 二次電池とその製造方法 ] から、
1階層上の [ IPC=H01M ] に拡大。
[ IPC=H01M ] は、「化学的エネルギーを電気的エネルギーに直接変換するための方法または手段,例.電池」と定義されており、
  10/00:二次電池とその製造  以外に、
  6/00:一次電池とその製造
  8/00:燃料電池とその製造
  12/00:混成電池とその製造
を含む。

IPCの探索範囲を拡大した一方で、キーワードをANDして絞り込む。

注:多くのノイズを含むこととなるため、本来なら目視によるスクリーニング(ノイズ除去)を行うべきである。しかし、大まかな傾向を探るだけであれば何とかなるかもしれない。

まとめ

ポストLi+電池を探る目的で、探索範囲をIPCで「二次電池」から「燃料電池」や「混成電池」含む「電池」に拡大
(国際特許分類(IPC) H01M 10/00→H01M )*キーワードで検索
日本出願を調査した。

注:手がかりを探る程度の検索であり、精査した結果は期待でない。精度を高めるには、検索式の調整や論文など他の情報源による検証が必要。

  • 全体として、2010年頃から出願件数は増加傾向
  • 水素/空気電池は、燃料電池の一方式として自動車メーカーを中心に開発中か(?)
  • 潮流を作りそうな電池はLi硫黄電池。出願の中心はLG化学(KR)
  • 別の潮流はLi空気電池。NTTが注力(?)、パナソニックが参入(?)
  • Liの代替金属イオンを探る基礎研究は地道に継続中(?)

二次電池Ⅱ(テスラ) ~ポストLiイオンを探る~

電気自動車に注力するテスラ(TESLA)にとって電池はキーデバイスのはず。にもかかわらず、特許出願件数では存在感が見えてこない。テスラの特許出願戦略を探ってみた。

二次電池(H01M 10/00)の国際特許(PCT)出願 33,099件中、US出願人は 5,735件 (前回報告)
この中で、テスラ(Tesla Inc., Tesla Motors Inc., Tesla Motors Canada)の出願は、30件。

TESLAの出願国別出願戦略

まとめ

「二次電池」(国際特許分類(IPC) H01M 10/00)について調査した
国別・出願人別の国際出願動向では、TESLAの存在感は薄かった。
しかし、出願件数の絶対値が低いだけで、堅実な特許戦略

  • JP, DEなど、主要自動車メーカーのある国に出願
  • 車両、電池、周辺回路などへ、バランスよく出願
  • 興味のある新規分野は、宇宙開発よりも太陽電池か?

二次電池Ⅰ(概観) ~ポストLiイオンを探る~

Li-S電池をはじめとして、Li空気電池、K+電池、水素/空気電池、など、種々の二次電池が研究開発されている。

参考:「現行Liイオン2次電池超えの電池が台頭、2020年にLi-S系が実用化へ」(日経XTECH, 2020.1.17)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01140/00009/

特許分析からは、どんな景色が見えるのか?』探ってみた。

国際特許分類(IPC)で「二次電池」に分類される特許を分析

予想通り、中国特許の出願件数が多い。US, KR, EPよりも、日本出願が多い。

国際特許(PCT)出願に着目

重要な特許に絞る一つの簡便なやり方として、国際特許(PCT)出願に着目してみた。

出願人の国籍としては、JPが圧倒的に多い。

年次推移をみてみると、日本企業の国際特許出願件数は、2011年後失速している(震災のダメージはともかく、ダメージからの回復が見られない)。一方、2014年頃から韓国と中国からの出願が急伸している。

出願人国籍別アクティブプレイヤー

出願人の国籍別に、出願件数の多い出願人の顔ぶれを見てみる。

まとめ

  • ポストLi+電池を探る目的で、まず現状を概観「二次電池」(国際特許分類(IPC) H01M 10/00)について国別・出願人別の国際出願動向を調査
  • ここ20年の出願件数の合計は、日本がトップだが、2011年以降急減中。一方、急伸しているのは、韓国と中国
  • 韓国は、LGに集中(61%)
  • 中国は、BYDがトップ(12%)ながら分散している